灘中算数の入試問題を不定期で解説しています。
今回は中学受験の花形? 食塩水の問題(濃度算)です。
2022年 1日目大問3 難易度★★☆☆☆
方程式は習っていないものとして考えていきます。
(理由は過去記事を参照ください)
前半部分は分からない数字(□の部分)が多く、最初からこちらを処理するのは難しそうです。
そんな時は、その分かりづらい部分を棚上げして、問題文後半を先に見ていきます。
最後は(濃度3.1%の食塩水、量は不明)+(食塩10g)→(濃度5%の食塩水)
となっています。
これをてんびん図(*1)に直します。
(難しい食塩水の問題(濃度算)は、てんびん図で考えると分かりやすいと思います)
(3.1%の食塩水の量)と(食塩の量=10g)の比は、5.0%の食塩水からの量の差(上の図で1.9と95)の逆比となります。
よって、(3.1%の食塩水の量):(食塩の量=10g)=95:1.9=50:1
この1が実際は10g(食塩の重さ)なので、3.1%の食塩水は500gと分かります。
ここまでで問題文の後半部分が終わったので、前半部分に移っていきます。
もともと、①%の食塩水②gに1.9%の食塩水100gを加えると3.1%の食塩水500gができたので、
②=500-100=400g と分かります。
よって上のてんびん図と同様に、①は下の様にてんびん図で表すことができます。
上の図の?は①(食塩水の濃度)と3.1%の差を表しています。
てんびん図1の時と同様に、1.2:?は「食塩水の量の比」の逆比となるので、
400:100=1.2:?
と分かります。
ここから?=0.3と分かるため、
(比の内項の積と外項の積が等しいことを利用(*2))
①=3.1+0.3=3.4% と分かります。
濃度算を含め、基本的な内容を理解していれば(灘中の入試問題の中では)比較的簡単に解くことができる問題だと思います。
(*1)てんびん図について
てんびん図とは、濃度の異なる二つの食塩水(食塩そのものや真水でも良い)を混ぜることで、新たな濃度の食塩水ができるという濃度算の問題を解く方法の一つです。
濃度算の問題は、てんびん図の他に面積図などでも解くことができますが、問題を解く速さや応用力を考えると難しい問題ほどてんびん図が使いやすいです。
実際、下の問題集紹介で掲載している最高水準問題集の解説では基本的にてんびん図を用いて説明されています。
てんびん図に関して詳しくは以下の記事をご覧ください。
(*2)比の内項の積と外項の積が等しい
例えば、A:B=C:Dのとき
=に近い数字(項と言います)、この場合はBとCを内項
=から遠い項、この場合はAとDを外項と言います。
比の性質として、内項どうしと外項どうしを掛けたもの(積)は等しくなります。
上の例であれば、
B×C=A×D
となります。
こちらも詳しくは以下の記事をご覧ください。
食塩水の問題(濃度算) 問題集の紹介
食塩水を含む濃度の問題は、それに特化した問題集というのが(私の知る限り)ありません。
色々な問題が収載されている問題集の一部分という形になります。
てんびん図を理解するうえで参考にできそうなyou tubeや参考書(問題集)と併せて、いくつか参考になりそうな問題集を挙げておきます。
てんびん図の理解におすすめ
けいたくチャンネル [youtube]
上で使用しているてんびん図は、理解が難しい場合けいたくチャンネルを視聴するのがおすすめです。
けいたくチャンネルは算数の内容を基本から非常に分かりやすく解説されており、何より無料なので我が家でも愛用していました。
自宅学習で分からない分野があるとき、新しい分野を勉強するときなどにおすすめです。
続受験算数の裏ワザテクニック [文英堂]
裏ワザテクニックシリーズは個人的には理科分野がおすすめなのですが、算数でも分野や用途によってはおすすめです。
続受験算数の裏ワザテクニックでは濃度算をてんびん図を用いて詳しく解説されており、例題と併せて理解しやすくなっています。
その他、この「続……」には虫食い算や倍数変化算といった受験で必須、かつ大人もよく分かっていない分野が収載されています。
子どもも読みやすいですし、大人が説明する助けにもあるためおすすめです。
注意点として、「続……」ではない受験算数の裏ワザテクニックにも濃度算が収載されていますが、てんびん図の解説はありません。
受験算数の裏ワザテクニックにも旅人算や通過算、ニュートン算といった重要項目が収載されているのでおすすめの本ではあるのですが。
濃度の問題を含むおすすめの問題集
濃度算を含む問題集というので探しましたが、どれも数問しか収載されていないようです……。
てんびん図を使用するのが良さそうな、難問を含む(どちらかと言えば難関校志望者向けの)問題集を色々紹介してみます。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめです。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
スピードアップ算数 [文一総合出版]
入試で重要な項目を取り上げ、詳しく解説されている問題集です。
難関校受験者が想定されているのか、基礎編と言っても受験算数の基礎というイメージです。
一通りの算数の勉強が終わった生徒向け、難関校受験者なら5年生頃、中堅校受験者なら6年生頃におすすめです。
中学入試 最高水準問題集 算数 [文英堂]
市販の(一般の書店で販売されている)問題集で最難関の問題集と言えば、この最高水準問題集だと思います。
過去にも当ブログで紹介したことがありますが、難問かつ良問が厳選されています。
分野別で問題が収載されているため、今回の範囲のように濃度算の問題を復習したいときなどに有効です。
用途を考えると、再難関校を目指す生徒が6年生の春から夏頃に特定の分野のやり直し目的で使用するのにおすすめです(塾の勉強+αの勉強がしたい、など)。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめの月刊誌「中学への算数」の中で、「発展演習」という難問として取り上げられた問題が厳選されています。
(この問題集は、上記の算数プラスワン問題集とともに一般の書店では見たことがありません。大きい書店にはあるかもしれませんが、ネットでの購入が無難です)
難関校を受験しようと考えている6年生が、高いレベルで一通り復習するにはおすすめの問題集です。