灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2021年1日目の3番、場合の数に関する問題です。
標準的な難易度の問題ですが、「如何に効率よく漏れなく数字を数えられるか」がポイントだと思います。
灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。
灘中受験生は、この問題のように標準的な難易度の問題はミスなく短時間で解きたいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 1日目大問3 難易度★★★☆☆
各桁の数字の和が5である4桁の数字を考える問題です。
4つの数字の組み合わせと、その数字の並べ方を考えていきます。
場合分けで解く方法(0の個数に注目)
0が3個含まれる場合
4つの数字の組み合わせが(5,0,0,0)の場合
組み合わせて作ることができる4桁の数字は5000のみの1通り。
(一番大きい桁の数字が0では数字として成立しないため、つまり0500は4桁の整数とはいえない)
0が2個含まれる場合
4つの数字の組み合わせが(4,1,0,0)の場合
千の位の数字は4または1の2通り。
4または1のうち、千の位に選ばれなかった方の数字は百の位、十の位、一の位の3通りの並べ方がある。
(例えば千の位が4の場合、千の位に選ばれなかった1は百の位、十の位、一の位のどこに並べるかで3通りの並べ方がある(注1))
よって、並べ方の合計は
2(千の位の数字の選び方)×3(残りの数字の並べ方)=6 通り。
(このうち、千の位が1のものは3通り)
(↑ 2021より小さい数の解説のため青字にしています)
4つの数字の組み合わせが(3,2,0,0)の場合
上の場合(4,1,0,0)と同様に並べ方は6通り。
(このうち、千の位が2で2021より小さいものは2003の1通り)
(↑ 2021より小さい数の解説のため赤字にしています)
0が1個含まれる場合
4つの数字の組み合わせが(3,1,1,0)の場合
千の位の数字が3の場合、残る3桁の組み合わせは0をどこに並べるかの3通り(注1)。
千の位の数字が1の場合(残りの数字は3,1,0)、残る3桁の組み合わせは異なる3つの数字の並べ方なので、 3×2×1=6 通り。
合計9通りの並べ方がある。
(他の考え方)
0を含めた3種類4個の数字を並べた場合の数(総数)から千の位が0のものを引くという考え方でもOK。
0を含めた4個の数字の並べ方は
4×3×2×1=24 通り。
これは2個含まれる1をそれぞれ別の数字と考えているため、実際の並べ方(総数)は
24÷2=12 通り(注2)。
ここから千の位が0になる場合の数を引く。
千の位が0になる場合の数は、残りの3桁に3,1,1を並べる並べ方。
つまり3を百の位、十の位、一の位のどこに並べるかなので、3通り(注1)。
よって12-3=9 通りの並べ方がある。
4つの数字の組み合わせが(2,2,1,0)の場合
(3,1,1,0)の場合と同様に考えることができるため、9通り。
(千の位が1の場合の数は0の位置を考えて3通り、千の位が2で2021より小さいものは2012の1通り)
0が1個も含まれない場合
4つの数字の組み合わせが(2,1,1,1)の場合
4桁の数字のどこに2を並べるか考えると4通り(残りは1になる)。
(千の位が1の場合の数は3通り、千の位が2で2021より小さいものは無い)
ここまで全て合計すると、
1+6+6+9+9+4=35通り。
このうち千の位が1のものは上記青字の部分で15通り。
千の位が2で2021より小さいものは上記赤字の部分で2通り。
よって、2021は小さい方から数えて18番目。
以下に数列の並べ方(文中で、(注)とした箇所)の補足を書きます。
これだけでは分からない人には本当に分かりにくいと思うので、次回「場合の数の考え方(まとめ記事)」を書こうと思います。
(注1)2種類、3つの数字の並べ方
3つの数字のうちの二つが同じ場合、一つしかない数字の位置を考えることで簡単に並べ方を求めることができます。
例えば、3つの数字3,1,1を並べる並べ方を考えるような場合、3の位置は百の位、十の位、一の位、つまり311、131、113の3通りです。
(注2)3種類、4つの数字の並べ方
重複する数字がある場合は、それぞれを別の数字と考えた後で区別したものを割ることで並べ方を求めることができます。
例えば、4つの数字3,1,1,0の並べ方を考える場合、二つある1を区別(1a、1bと記載)して考えてみます。
そうすると並べ方は4つの異なるものの並べ方なので、4×3×2×1=24 通り。
すべて書くと、下の様になります。
(3,1a,1b,0)(3,1b,1a,0)
(3.1a.0,1b)(3,1b,0,1a)
(3,0,1a,1b)(3,0,1b,1a)
(1a,3,1b,0)(1b,3,1a,0)
(1a,3,0,1b)(1b,3,0,1a)
(0,3,1a,1b)(0,3,1b,1a)
(1a,1b,3,0)(1b,1a,3,0)
(1a,0,3,1b)(1b,0,3,1a)
(0,1a,3,1b)(0,1b,3,1a)
(1a,1b,0,3)(1b,1a,0,3)
(1a,0,1b,3)(1b,0,1a,3)
(0,1a,1b,3)(0,1b,1a,3)
このうち、左右に並んだ二つの数字の組み合わせは同じものです。
(本来同じものである二つの1を1a、1bのように区別して数えているため)
このため、並べ方は24÷2=12 通りとなります。
また、赤字の部分(3通り)は千の位が0になっているため4桁の整数とは言えません。
このため、答えは9通りとなります。
場合分けで解く方法(千の位の数字に注目)
上の解き方は0が何個含まれるか注目して分類していますが、この解き方では千の位の数字に注目して分類していきます。
各桁全ての数字の合計が5であることに注意しながら考えていきます。
千の位が5の場合
残りの数字の合計は0なので、並べ方は1通り。
千の位が4の場合
残りの数字の合計は1なので、並べ方は3通り。
(上の(注1)と同様に考える。1の位置は3通り)
千の位が3の場合
残りの数字の合計は2なので、2,0,0または1,1,0の並べ方を考える。
いずれの並べ方も上の(注1)と同様に考えて3通りなので、合計6通り。
千のの位が2の場合
残りの数字の合計は3なので、3,0,0または2,1,0または1,1,1の並べ方を考える。
3,0,0の場合、並べ方は上の(注1)と同様に考えて3通り。
2,1,0の場合、並べ方は3×2×1=6 通り(異なる3つの数字の並べ方)。
1,1,1の場合、並べ方は1通り。
合計10通り。
このうち2021より小さいものは、2012、2003の2通り。
千の位が1の場合
残りの数字の合計は4なので、4,0,0または3,1,0または2,2,0または2,1,1の並べ方を考える。
4,0,0・2,2,0・2,1,1の場合、いずれも上の(注1)と同様に考えて3通りなので、合計9通り。
3,1,0の場合、並べ方は3×2×1=6 通り(異なる3つの数字の並べ方)。
合計15通り。
すべてを合計して、答えは35通り。
また、千の位が1の場合は15通り、千の位が2のうち2021より小さいものは2通りなので、2021は18番目となる。
別解
上の解き方はいずれも場合分けの解き方ですが、数字を〇の個数で表し、どこに区切り(|)を置くかという考え方で、各桁にどれだけの数字が含まれるか考える方法もあります。
(高校数学っぽい考え方ですが、慣れれば簡単に考えることができます)
別解を解説する前に、次の例題を考えてみます。
(例題)
5個の球を3人で分ける分け方を求めなさい。(ただし、1個も球をもらえない人が居ないものとする)
この問題を、下の様に〇を並べて考えます(他の考え方もありますが……)。
〇 〇 〇 〇 〇
これを3つのグループに分けます。
〇と〇の間の隙間(4か所)のうち2か所に区切り(|)を立てます。
(例えば、〇|〇〇|〇〇のようになります)
これは4つのもの(隙間)から2つのもの(|を立てる位置)を選ぶ選び方になるので
4×3÷2=6 通りとなります(注3)。
(別解)
例題の考え方を利用して考えます。
同じように〇を並べて、間に|を立てることで〇に見立てた数字を分配します。
(〇は1個が数字の1を表すと考えます)
例えば、〇|〇〇|〇|〇 ならば、千の位が1、百の位が2、十の位が1、一の位が1、つまり1211を表しています。
上の例題と異なり、千の位以外は0になってもOKです。
つまり、〇|||〇〇〇〇 のような状況があり得ます(この場合、1004を表しています)。
つまり5個の〇と3個の|の並べ方なので、
8×7×6÷(3×2×1)=56 通り(注3)。
これは、一番最初が|の場合(つまり千の位が0の場合)も含むので、最初が|となる並べ方を引きます。
残る5個の〇と2個の|の並べ方は、7×6÷(2×1)=21 通り(注3)。
よって答えは、56-21=35通り。
(別解の別解)
千の位は1以上の数字となるため、一番左に〇を固定しておくと考えることもできます。
そうすると、残り4個の〇と3個の|を並べる並べ方なので、
7×6×5÷(3×2×1)=35通り (注3)。
次に2021より小さいものは、千の位が1のものと、2012、2003。
千の位が1のものは、
〇|から始まる並べ方になるので、4個の〇と2個の|の並べ方となる。
これは、6×5÷(2×1)=15 通り(注3)。
よって答えは18番目。
(注3)2種類、複数個の物の並べ方
全体の並べ方を、同じ種類の物の並べ方で割ることで求めることができます。
例えば、〇3個と△2個を並べる場合を考えます。
全部で5個並べる並べ方は、5×4×3×2×1=120 通り。
このうち、実際は区別が無いのに〇3個と△2個をそれぞれ区別して数えています。
〇3個は、同じ組み合わせを3×2×1=6 回数えています。
同様に、△2個は同じ組み合わせを2×1=2 回数えています。
このため、実際の並べ方は、120÷6÷2=10 通りとなります。
この考え方も苦手な人には分かりづらいと思われるため、次回「場合の数の考え方(まとめ記事)」にもう少し詳しく書こうと思います。
解説(場合の数を解くポイント)
今回の問題は、受験算数の問題として標準的な難易度の問題と言えます。
そのため、難関校受験生であれば確実に得点したいところです。
場合の数を解くためには、解き方を覚えるのではなく、なぜそうなるのか理解することが重要です。
最悪の場合、樹形図や(今回のように)場合分けを漏れなく正確に書くことで、正解に辿りつけるように普段から問題演習しておきましょう。
試験の時はきれいな解き方が思い浮かばないことも多いです。
別解で示したような鮮やかな解き方が浮かばなくても、丁寧に場合分けすることで確実に解けるようにしましょう。
今回、当初想定していた倍以上の文字数となってしまい、正直読みにくくなってしまいました……。
次回の記事で、改めて一般的な場合の数の考え方をまとめてみようと思います。
場合の数の問題 問題集の紹介
場合の数の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
中学受験で学んだ考え方は、一部は大学受験まで使用することもあるくらいです。
この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。
この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。
今後灘などの難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
場合の数を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
基本~標準
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 図形・場合の数編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「数・割合と比・速さ編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
分野別集中レッスン算数 場合の数 [文英堂]
場合の数の基本は樹形図など、漏れなく全ての場合を書きだすテクニックだと思います。
そういった、本当に大事だけど学びにくい基本を押さえているのがこの分野別集中テクニック 場合の数です。
短期間で終わるようになっているので場合の数を学び始める4年生にも、苦手を復習したい5年生にもおすすめです。
我が家の次男は場合の数が苦手だったので、6年生になってやっていました。
速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
自分で完成させるノートのような問題集で、どちらかというと参考書に近いかもしれません。
分野別集中レッスンよりやや難しい問題が多い印象です。
解説が分かりやすいため、自宅学習向きです。
塾に通っている人でも、場合の数に苦手意識があれば良いと思います。
難関校対策
割合の問題に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。
中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]
この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。
5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。
6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。
程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。