前回記事で、灘中の場合の数の問題を解説しました。
前回記事を書いている中で、場合の数が苦手な人に分かってもらうように解説するのは難しいと感じました。
実際、我が家の次男も場合の数が苦手だったのですが、説明には非常に苦労しました。
今回、場合の数の中で、特につまづきそうな部分の考え方を中心に簡単な例題を解きながら解説していきます。
場合の数の考え方
場合の数の基本は、樹形図など全てのパターンを漏れなく書き出すことです。
簡単に数パターン紹介します。
場合の数の樹形図での考え方
簡単な2パターンの問題で解説します。
例題1
A、B、Cの3枚のカードを並べるとき、並べ方は何通りですか?
以下のような樹形図を考えます。
上の樹形図で一目瞭然なのですが、答えは6通りです。
樹形図を書くポイントは、書く順番を決めることです。
上の樹形図では、左側のカード(1枚目のカード)から順に、A、B、Cの順でカードを選ぶようにしています。
……分かりづらいですよね。
具体的には、1枚目がAの場合、2枚目にBを選ぶ場合とCを選ぶ場合が考えられます。
次は1枚目がBの場合、その次に1枚目がCの場合……というように全てのパターンを漏れなく書き出すようにします。
文章にすると分かりにくいですが、深く考えずに次の例題に移りましょう。
例題2
2つのサイコロ(大・小)を振った時に出る目は何通りですか?
これも以下のような樹形図を考えます(長くなるため途中は省略しています)。
この問題のポイントはサイコロに大小の区別があることです。
(サイコロの区別が無い場合を例題3で解説します)
例題1で書いた樹形図のポイントと同様に、この問題では目が小さいものから順に書くことで、漏れが無いようにしています。
途中を省略していますが、分かりづらい場合は全て書いて考えても良いです。
(全て書き出すと36通りになります)
大きいサイコロの目1つにつき、小さいサイコロの目は6通りあることが分かると思います。
つまり、6(大きいサイコロの目)×6(小さいサイコロの目)=36 通りと考えられます。
例題1と2に共通する樹形図のポイントは、漏れなく全ての場合を考えること。
そのために、A、B、C……順や数字の小さい順など書き出す順番を決めることで、漏れを防ぐようにするのが良いと思います。
ここまでは簡単な樹形図の説明をしてきましたが、ここから計算の考え方を解説していきます。
場合の数の計算での考え方
まずは簡単なパターンとして上の例題1と2を計算を使った解き方で解説します。
例題1
A、B、Cの3枚のカードを並べるとき、並べ方は何通りですか?
1枚目のカードはAまたはBまたはCの3通り。
2枚目のカードは1枚目のカードで選ばれた1枚を除く2通り。
3枚目のカードは残る1通り。
……これを掛け算すると答えが出るのですが、掛け算の理由が分からない場合があるようです。
このため樹形図を再掲します。
1枚目のカードはAまたはBまたはCの3通り。
2枚目のカードは樹形図を見ると、1枚目のカードそれぞれに対して2通りあることが分かります。
この「それぞれに対して」というのがポイントで、1枚目のカード3通りにそれぞれ2枚目のカードは2通りの選び方があるため、1枚目・2枚目の選び方(樹形図の枝の数)は3×2 というように掛け算になります。
ちなみに3枚目のカードは、2枚目までをどのように選んでも1通りです。
(残るカードが1枚しかないため)
よって答えは、3×2×1=6 通りです。
例題2
2つのサイコロ(大・小)を振った時に出る目は何通りですか?
同様に樹形図を再掲します。
大きいサイコロの出る目は1から6の6通り。
そのそれぞれに対して小さいサイコロの目は6通りであるため、出る目の組み合わせは、6×6=36 通りとなります。
例題3
区別できない2つのサイコロを振った時に出る目は何通りですか?
例題2では2個のサイコロを区別していましたが、この問題のように区別できない場合もあります。
このタイプの問題の考え方のポイントは、例題2で(大きいサイコロ、小さいサイコロ)=(1、6)と(6、1)のように区別していたものを区別しない(つまり1通りと数える)ということです。
2つのサイコロの目が同じもの((1、1)、(2、2)……など)は6通り。
この6通りはサイコロを区別してもしなくても変わらず6通り。
例題2の場合で、2つのサイコロの目が異なるものは、36-6=30 通り。
2つのサイコロの目を区別したとき2通りと数えていたものが区別しないときは1通りになるため、サイコロを区別しないとき、この30通りは半分の15通りになる。
つまり答えは、6+15=21 通りとなります。
次は区別できない人や物と区別できる人や物が混在しているパターンについて解説します。
例題4
男子2人と女子1人の並び方は何通りありますか? 男子2人を区別する場合と区別しない場合について答えなさい。
物や人を並べる(数字やカードも含む)場合、並べる場所(この例題なら3か所)それぞれに対して何通りずつの並べ方があるかを考えます。
この問題であれば、3か所の人が並ぶ場所にそれぞれ何通りの並び方があるかを考えます。
男子どうしを区別する場合、3人の異なる人の並べ方を考えることになります。
1か所目は3通り、2か所目は残る2通り、3か所目は1通りとなるため、
3×2×1=6 通りとなります。
男子を区別しない場合、男子を区別する場合を男子の並べ方で割ることで求めることができます。
男子をA君とB君とする場合、(A、B、女子)と(B、A、女子)を区別しないようになるので、÷2することになります。
よって答えは、6÷2=3 通り。
男子が3人の場合であれば、男子の並び方は3×2×1=6 通りあるため、÷6することになります。
つまり、区別しないものの並べ方は、一旦区別した状態で並べた場合の数を、区別するものだけを並べた場合の数で割ることで求められます。
(例題5に関連問題を出しています)
ちなみに、この例題は女子が3か所の並ぶ場所のどれに並ぶか? という3通りと考えることもできます。
例題5
男子4人と女子3人を並べる並べ方は何通りありますか? また女子が3人隣り合うとすると並び方は何通りですか? ただし男子どうし、女子どうしは区別しないものとする。
7人が並ぶ並び方(それぞれを区別するとする)は、7×6×5×4×3×2×1=5040 通り。
このうち、ある並び方(例えば男男女男女女男など)について、男子の位置(1通り)の所をA君B君C君D君の並び方のように重複して数えている(女子の位置も同様)。
よって全体から男子、女子の並び方で割る。
男子の並び方は4×3×2×1=24 通り。
女子も同様に3×2×1=6 通り。
よって答えは、5040÷24÷6=35 通り。
また女子3人が隣り合うのであれば、女子3人で1人とみなして並べる並べ方を考えると良い。
それは、男子4人、女子1人の並び方となるため5通り。
(男子どうし、女子どうしを区別する場合、まず始めに女子3人を一まとまりとみなした5人(男子4人女子1人)の並び方を考えて、女子のまとまりの中の3人の並び方を掛けると考える)
次は前回解説した灘中の入試問題のように、数字を並べるパターンの問題です。
例題6
1から3の数字が書かれたカードがたくさんあるとき、それらのカードを並べてできる3桁の整数は何通りですか?
よくある数字の並べ方の問題です。
色々なパターンがありますが、同じ数字を使えるか、0を含むか(0は一番大きい桁では使えない)などを確認して解くようにしましょう。
ちなみにこの例題は非常に簡単に解けるのですが、考え方の練習として別解も解説します。
百の位は1から3の3通り。
十の位、一の位も同様に3通りなので、3×3×3=27 通り。
考え方の練習として他の考え方でも解いてみます。
3桁の数字が全て異なる場合、百の位の数字は3通り、十の位は2通り、一の位は1通りの数字の選び方があるため、並べ方は3×2×1=6 通りです。
3桁の数字が2種類の数字の場合(例 221、131など)
2個含まれる数字の選び方は3通り(1から3)。
1個含まれる数字の選び方は2通り(1から3のうち、上で選ばれたものを除く)。
よって、数字の選び方は、3×2=6 通り。
選ばれた数字(例えば1,1,3)の並べ方は、一つの数字(例なら3)を3桁のどこに置くかで3通り。
(もしくは、例題4のように、2つの同じ数字(例なら1)を区別した並べ方を考えて、2つの同じ数字を並べた場合の数で割ることでも求められます)
以上から、この場合の並べ方は、6×3=18 通りとなります。
3桁の数字が1種類の数字の場合
111もしくは222もしくは333、つまり1から3の3通り。
これらをすべて合計し、6+18+3=27 通り。
前回記事の問題はこのパターンの問題であるため、興味があれば解いてみてください。
場合の数の問題 問題集の紹介
場合の数の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
中学受験で学んだ考え方は、一部は大学受験まで使用することもあるくらいです。
場合の数を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
基本~標準
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 図形・場合の数編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「数・割合と比・速さ編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
分野別集中レッスン算数 場合の数 [文英堂]
場合の数の基本は樹形図など、漏れなく全ての場合を書きだすテクニックだと思います。
そういった、本当に大事だけど学びにくい基本を押さえているのがこの分野別集中テクニック 場合の数です。
短期間で終わるようになっているので場合の数を学び始める4年生にも、苦手を復習したい5年生にもおすすめです。
我が家の次男は場合の数が苦手だったので、6年生になってやっていました。
速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
自分で完成させるノートのような問題集で、どちらかというと参考書に近いかもしれません。
分野別集中レッスンよりやや難しい問題が多い印象です。
解説が分かりやすいため、自宅学習向きです。
塾に通っている人でも、場合の数に苦手意識があれば良いと思います。
難関校対策
割合の問題に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。
中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]
この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。
5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。
6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。
程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。