灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2021年1日目の4番、速さと比に関する問題です。
やや易しい難易度の問題ですが、速さの問題の基本事項を理解しているか、比の基本問題を理解しているかがポイントだと思います。
灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。
灘中受験生は、この問題のように易しい問題はミスなく短時間で解きたいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、比較的易しい難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 1日目大問4 難易度★★☆☆☆
速さの問題(特に旅人算など)でよく問われる、「○の距離を△の速さの人と□の速さの人が両端から出発して出会う」タイプの問題を考えます。
このタイプの問題は、距離を2人の速さの合計で割ることでかかる時間を求めることができます。
解き方
点Pと点Rが出会うのにかかった時間というのは、BからCまでの距離(正方形3辺分)を点Pの速さと点Rの速さの合計で割ったものになります。
同じように、点Qと点Rが出会うのにかかった時間というのは、AからCまでの距離(正方形2辺分)を点Qの速さと点Rの速さの合計で割ったものになります。
点P、Q、Rの速さをそれぞれP、Q、Rで表すことにすると、
3÷(P+R)=2÷(Q+R)×2 ーー❶
と表せます。
これを通分すると、
4×(P+R)=3×(Q+R)
つまり、
4×P+R=3×Q
と表せます。
ここで、問題文から
Q=3×P
とわかるので、
4×P+R=3×3×P
よって
R=5P
つまり点Rの速さは点Pの速さの5倍とわかります。
文字式を多用することになってしまい、内容は難しくないものの方程式を習わない小学生にはやや理解が難しくなってしまったと思います。
このため、次の別解のように解いてみます。
別解
上の解き方では、❶の式で(距離)÷(速さ)=(時間)であることを使っています。
ここで、(距離)÷(時間)=(速さ)を利用することで解くこともできます。
①の式で、PとRの速さの合計は、3÷2 で表せます。
(3辺分の距離を、2の時間で移動している)
同様に、QとRの速さの合計は、2÷1 で表せます。
よって、(P+R):(Q+R)=3:4
ここで、QはPの3倍と書かれているので、Qを③、Pを①とすると
(①+R):(③+R)=3:4 ーー❷
❷は異なる比の値の比較(比を①と1で書かれている)になっています。
これをどのように解くか、以下の2通りの考え方があります。
❷の左辺の項の差(②)と右辺の項の差(1)が等しいことに注目すると、右辺の1が②と等しいことがわかるので、❷は次のように書き換えることもできます。
(①+R):(③+R)=⑥:⑧
よって、R=⑤、つまりRの速さはPの速さの5倍と分かります。
❷の式は比の内項と外項の積を利用して解くこともできます。
(考え方は以下の過去記事をご覧ください)
文章にすると若干わかりにくいですが、同じ比を2通りの比の値で書かれていることに注目することがポイントです。
問題自体は基本的な問題だと思われます。
速さと比の問題 問題集の紹介
速さの問題も割合(比)の問題も中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
この問題は、速さに関しては基本的な事柄を理解していれば難しくないですし、比の内容に関してもこの問題のように二つ以上の異なる割合(比)が関係する問題というのは頻出問題です。
この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。
この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。
今後灘などの難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 数・割合と比・速さ編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「図形・場合の数編」とともに勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も秀逸なため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
中学入試分野別集中レッスン 算数 速さ[シグマベスト]
速さの問題の基礎の基礎から入試基礎レベルの問題までを勉強するのに最適な一冊です。
1日4ページ、2週間でできるようになっているため(最後の入試問題は6ページ)、速さの範囲が苦手な5、6年生の復習にも適しています。
この問題集の良いところは、1-3日目に勉強した内容を4日目に復習というように無理なく復習もできるため、学習した内容が定着しやすいところだと思います。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。