灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2021年2日目の1番、濃度算に関する問題です。
入試レベルとして標準的な難易度なので、灘中受験生は確実に得点したい問題です。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
(1)と(2)アまでであればやや簡単な難易度なので、難関校受験生以外でもチャレンジしてみてください。
2021年 2日目大問1 難易度★★★☆☆
(1)
重さが120gで濃度が60%のA液に含まれる液体Xの重さは、
120×0.6=72g
同様に、重さが120gで濃度が80%のA液に含まれる液体Xの重さは、
120×0.8=96g
つまり重さ120gで濃度が60%以上80%以下のA液に含まれる液体Xの重さは、
72g以上96g以下と分かります。
また、濃度96%のA液に含まれる水と液体Xの重さの比は、
4:96=1:24
なので、72gの液体Xに相当する濃度96%のA液は
72÷24×25=75g
同様に96gの液体Xに相当する濃度96%のA液は
96÷24×25=100g
よって。答えは75g以上100g以下と分かります。
(2)(ア)
この問題は方程式を習った人であっても、方程式で解くよりもてんびん図で解く方が容易だと思われます。
てんびん図は以下のようになります。
水(つまり濃度0%の水溶液)(R)と濃度96%の水溶液(P)を混ぜて濃度72%の水溶液を作るので、72%の水溶液との濃度の差(上のてんびん図の下側の数字)の比は
72:24=3:1
Q(0%水溶液)の重さ:P(96%水溶液)の重さは濃度の比の逆比となるので、1:3と分かります。
ここでPは8gずつ増えるので8の倍数。
Qも同様に10の倍数となります。
また、PはQの3倍なのでPも10の倍数、かつ3の倍数と分かります。
よって、Pは3、8、10の最小公倍数である120の倍数です。
Pは問題文より144g以下なので、Pは120g、つまり15回。(120÷8=15)
Qは120÷3=40g、つまり4回 が答えです。(40÷10=4)
(2)(イ)
(ア)から、QよりもPを使う量が多い(Qの方が余る)ことが分かります。
つまり、R(できる水溶液)の量を多くするには、Pを多く使えばよいことになります。
Pを最大量(144g)使う場合を考えます。
(144は8の倍数なので、ちょうど使い切ることができます)
Rが最大になるのは最も多くQを使う場合、つまり濃度が最も薄いときです。
問題文に濃度は60%以上と書いているので、60%になる場合のQの量を求めます。
(ア)と同様にてんびん図を考えると以下のようになります。
(濃度の差の比)=60:36=5:3
なので、QとPの重さの比は逆比となり、3:5
Pは144gなので、このときのQは
144×3÷5=86.4g
問題文にQは10の倍数(10gずつ量りとる)と書いているので、Qの最大値は80g。
このとき、濃度は
144×0.96÷(144+80)×100=61と5/7(7分の5)
よってPは144÷8=18回、Qは80÷10=8回、濃度61と5/7(7分の5)%
((2)イの別解)
濃度もてんびん図で求める方が計算は容易です。
(てんびん図は割愛します)
PとQの重さの比は144:80=9:5
よって、PとQの濃度の差の比は逆比となり5:9
Pの濃度は96%、Qの濃度が0%なのでRの濃度は
96×5÷14=61と5/7(7分の5)
解説
てんびん図を使うと比較的容易に解ける問題だと思います。
方程式を使う方が混乱する典型的な問題です。
(2)イはどう解くか迷うかもしれませんが、(1)と(2)アの考え方を使う誘導問題です。
(1)から濃度60%以上になるとRの量(割合)が増えるという考え方(当たり前ですが……)、(2)アからPを使う量がQに比べて多い(Pが律速段階になる、速度ではないですが)という考え方を利用します。
今回、作図にCanva(はてなブログに付いている画像編集ソフト、当ブログでアイキャッチ画像を作っているソフトです)を使ってみました。
以前はPowerPointを使って作図していたので、はてなブログ上で作図できる分操作が簡便にはなったのですが、少し見にくい印象ですね……。
次に同様の問題があればPowerPointに戻すかもしれません。
最後に
濃度算の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
当ブログは灘中の算数を取り上げていますが、灘中をはじめ他の難関校でもよく出題されます。
この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。
この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。
今後難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
濃度算だけを集めた問題集は無い(少なくとも私は知らない)ので、当ブログで何度も紹介している問題集をてんびん図の解説と併せて再掲します。
てんびん図について
濃度算の問題を解く方法は何通りかありますが、難易度が高い問題はてんびん図が特に有効です。
てんびん図に関して分かりやすくまとめているものが少なかったので、当ブログの過去記事(てんびん図の解説)とおすすめ動画、参考書を紹介します。
当ブログ過去記事
てんびん図に関して解説しています。
良ければ参考にしてください。
けいたくチャンネル [youtube]
てんびん図の理解が難しい場合、けいたくチャンネルを視聴するのがおすすめです。
けいたくチャンネルは算数の内容を基本から非常に分かりやすく解説されており、何より無料なので我が家でも愛用していました。
自宅学習で分からない分野があるとき、新しい分野を勉強するときなどにおすすめです。
続受験算数の裏ワザテクニック [文英堂]
裏ワザテクニックシリーズは個人的には理科分野がおすすめなのですが、算数でも分野や用途によってはおすすめです。
続受験算数の裏ワザテクニックでは濃度算をてんびん図を用いて詳しく解説されており、例題と併せて理解しやすくなっています。
その他、この「続……」には虫食い算や倍数変化算といった受験で必須、かつ大人もよく分かっていない分野が収載されています。
子どもも読みやすいですし、大人が説明する助けにもあるためおすすめです。
注意点として、「続……」ではない受験算数の裏ワザテクニックにも濃度算が収載されていますが、てんびん図の解説はありません。
受験算数の裏ワザテクニックにも旅人算や通過算、ニュートン算といった重要項目が収載されているのでおすすめの本ではあるのですが。
問題集の紹介
濃度算を含む問題集というので探しましたが、どれも数問しか収載されていないようです……。
てんびん図を使用するのが良さそうな問題集を色々紹介してみます(問題集に関しては再掲です)。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 数・割合と比・速さ編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「図形・場合の数編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
濃度算の所でてんびん図に関しても触れられていますが、扱っている割合は少なめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめです。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
スピードアップ算数 [文一総合出版]
入試で重要な項目を取り上げ、詳しく解説されている問題集です。
難関校受験者が想定されているのか、基礎編と言っても受験算数の基礎というイメージです。
一通りの算数の勉強が終わった生徒向け、難関校受験者なら5年生頃、中堅校受験者なら6年生頃におすすめです。
中学入試 最高水準問題集 算数 [文英堂]
市販の(一般の書店で販売されている)問題集で最難関の問題集と言えば、この最高水準問題集だと思います。
過去にも当ブログで紹介したことがありますが、難問かつ良問が厳選されています。
分野別で問題が収載されているため、今回の範囲のように濃度算の問題を復習したいときなどに有効です。
用途を考えると、再難関校を目指す生徒が6年生の春から夏頃に特定の分野のやり直し目的で使用するのにおすすめです(塾の勉強+αの勉強がしたい、など)。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめの月刊誌「中学への算数」の中で、「発展演習」という難問として取り上げられた問題が厳選されています。
(この問題集は、上記の算数プラスワン問題集とともに一般の書店では見たことがありません。大きい書店にはあるかもしれませんが、ネットでの購入が無難です)
難関校を受験しようと考えている6年生が、高いレベルで一通り復習するにはおすすめの問題集です。