灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2022年1日目の5番、数の性質に関する問題です。
標準的な難易度の問題ですが、場合分けを正しく短時間でできるかどうかがカギになります。
灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。
灘中受験生は、この問題のように標準的な問題はミスなく短時間で解きたいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的~やや難しい難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2022年 1日目大問5 難易度★★★☆☆
まず、問題文の式を
A×B+A×C+A×D+B×C×D=A×(B+C+D)+B×C×D
と変形しておきます。
問題文の式は、式の前半部分であるA×(B+C+D)と後半部分であるB×C×Dの足し算になっています。
二つの項の足し算が偶数になるのは、偶数+偶数、もしくは奇数+奇数の場合です。
それぞれの場合に関して考えていきます。
偶数+偶数の場合
A×(B+C+D)から考えていきます。
A×(B+C+D)が偶数と言うことは、Aまたは(B+C+D)のいずれか(もしくは両方)が偶数ということです。
また、(B+C+D)が偶数になるとき、B、C、Dの3個の数字のうち、偶数は1または3個(奇数は0または2個といっても同じ)です。
つまりAが偶数、または(B+C+D)が偶数(両方偶数でも良い)となります。
なお、(B+C+D)が偶数というのはB、C、Dの3個の数字のうち、偶数が1または3個のときです。
次に、B×C×DはB、C、Dの3個の数字のうち、1個でも偶数が含まれると偶数になります。
これをまとめると
- Aが偶数の時、B、C、Dの3個の数字のうち、偶数が1個以上含まれる
- Aが奇数の時、B、C、Dの3個の数字のうち、偶数は1または3個含まれる
と分かります。
A、B、C、Dはいずれも1から10の整数と分かっているので、偶数は5通り、奇数も5通りです。
(↑場合分け……のイメージ画像です。こういう画像要らないですかね?)
Aが偶数のとき
B、C、Dの3個の数字のうち、偶数が1個以上含まれる必要があります。
これを、偶数が1個の時、2個の時……と考えていくのは大変です。
こういったときに、「全体の場合の数」から「当てはまらない場合の数」を引くことで簡単に求めることができます。
この場合で、「全体の場合の数」というのはAが偶数のときです。
Aは偶数の5通り、B、C、Dは何でも良いので各10通り考えられます。
この場合の数は5×10×10×10=5000通りです。
また、「当てはまらない場合の数」というのはB、C、Dが全て奇数のときです。
AからDまで各5通りと考えられます。
よって5×5×5×5=625通りです。
これを全体から引くと、5000-625=4375通りと分かります。
Aが奇数の時
B、C、Dの3個の数字のうち偶数は1または3個含まれると考えられるので、それぞれの場合を求めていきます。
B、C、Dの3個の数字のうち偶数が1つの場合
B、C、Dのどれが偶数か、というのは3通りです。
Aは奇数(5通り)、B、C、Dのどれか一つは偶数(5通り)、残りは奇数(各5通り)なので、
5×3×5×5×5=1875通りと分かります。
B、C、Dの3個の数字すべてが偶数の場合
Aは奇数(5通り)、B、C、Dはすべて偶数(各5通り)なので、
5×5×5×5=625通りと分かります。
つまり、Aが奇数の時、1875+625=2500通りと分かります。
奇数+奇数の場合
上述の通り、B、C、Dのどれか一つでも偶数が含まれるとB×C×Dは偶数になります。
よって、B、C、Dは全て奇数と分かります。
A×(B+C+D)において、B、C、Dは全て奇数なので(B+C+D)も奇数となります。
このとき、Aが偶数だとA×(B+C+D)も偶数になるため、Aも奇数です。
A、B、C、Dはすべて奇数(各5通り)なので、
5×5×5×5=625通りと分かります。
太字の数をすべて足すと、7500通りと分かります。
ひとつひとつ丁寧に考えると実はそれほど難しくありません。
ただ、短時間でミスなく場合分けすると考えるとやや難しい問題と言えると思います。
灘中合格者は、このレベルの問題でミスせず解くと思われるため、差が出やすい問題かもしれません。
(別解)
A×(B+C+D)とB×C×Dで分けて考えず、そのままAを偶数の場合と奇数の場合に分けても良いです。
少しイメージしにくいかもしれませんが……。
- Aが偶数の場合、BからDの1つ以上が偶数
- Aが奇数の場合、BからDの0個または1個または3個が偶数
のときに答えを満たします。
これは(全体)から、(Aが偶数かつ、BからDすべてが奇数の場合)と(Aが奇数かつ、BからDのうち2個が偶数の場合)を引くことになります。
全体は10×10×10×10=10000通り
Aが偶数かつ、BからDすべてが奇数の場合は5×5×5×5=625通り
Aが奇数かつ、BからDのうち2個が偶数の場合は5×3×5×5×5=1875通り
よって答えは7500通り
数の性質 問題集の紹介
数の性質の問題は、苦手な子は非常に苦手意識が強い気がします。
うちの子どもがそうでした……。
ただ、今回の問題は一つ一つ丁寧に場合分けして考えれば、実はそれほど難しくありません。
色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツなので、今後灘受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
数の性質を解くうえで、おすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
4~5年生向け
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
合格する算数の授業 数の性質編 [実務教育出版]
中学受験専門塾の授業内容を再現しているという内容は、先生と生徒の会話形式で分かりやすくなっています。
内容自体、基本的な事柄からかなり発展的な内容まで含むので、数の性質を初めて勉強する子だけでなく、幅広い層におすすめの一冊です。
解説が詳しいので、家で教えようという親にも優しい作りになっています。</p
単元別基本問題集基本の制覇 数の性質 [富士教育出版社]
数の性質の範囲の基本的~標準的な問題を集めた問題集です。
基本的な数の性質の内容を家庭学習で問題演習をしたい場合や、塾の問題集に+αしたい場合におすすめです。
5~6年生向け
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されていますが、数の性質の復習にも良いです。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
難関校受験6年生向け
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
数の性質に関する問題も取り上げられており、難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。