当ブログでは灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
(最新の2023年過去問は以下の過去記事を参照ください)
今回は2021年2日目の大問2番、規則性に関する問題です。
入試レベルとして標準的~やや難しい難易度の問題ですが、効率よく規則を見つけられるかがポイントです。
灘中入試算数2日目は60分で大問5問程度を解く形式で、2-3問完答、残りは部分点を目指したいところです。
灘中受験生は、この問題のように標準的な問題は完答したいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 2日目大問2 難易度★★★☆☆
解法・解説
この問題では偶数か奇数かだけを判別すれば良いのですが、それでも何をすれば良いのか分かりづらいと思います。
そのように「何をしたら良いのか分からない」、「どうやったら上手く解けるのか分からない」というようなときは、まず(1)を実際に書いて考えていくことで、(2)以降もそれを利用して解けるのではないかなと推測して解いていきます。
(問題文に(1)を解くのに十分なマスを書いてくれているのは優しいですね)
(1)
この問題を解くにあたり注目してほしいのは、(1)~(3)のいずれも偶数の個数しか聞いていないことです。
ここで、偶数か奇数かだけを判別できれば良いので、実際の足し算はする必要はありません。
つまり、偶数+偶数=偶数、奇数+奇数=偶数、偶数+奇数=奇数 ということに気づく必要があります。
この問題を解くだけであれば、問題文に書いてくれているマスに実際に書き込むことで容易に考えられると思います。
偶数=〇、奇数=△と表記して8×8マスを表記すると次のようになります。
△ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ |
△ | 〇 | △ | 〇 | △ | 〇 | △ | 〇 |
△ | △ | 〇 | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 |
△ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | △ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
ここで〇(=偶数)の個数を数えると、37個と分かります。
(2)
(1)と同様に16×16マスを考えます。
すると、(1)で書いた8×8マスと同じ大きさのマスが左上、右上、左下、右下の4か所に並ぶ形になります。
さらに、それぞれの8×8マスの一番上の段と一番左の列が何になるか考えます。
実際に書いてみると、右上の8×8マス(下の図で赤字で書いている部分)も左下の8×8マス(下の図で青字で書いている部分)も左上の8×8マスと全く同じであることが分かります。
考え方のヒント:実際に確認するのは一番上の段と一番左の列だけでOKです。
規則性が分かっていない状況でも実際にある程度書いてみて、何か規則があるはずだ(単に書かせるだけの問題が出るはずがない)と考えていくと規則を見つけられると思います。
△ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ |
△ | 〇 | △ | 〇 | △ | 〇 | △ | 〇 | △ | |||||||
△ | △ | 〇 | 〇 | △ | △ | 〇 | 〇 | △ | |||||||
△ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |||||||
△ | △ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |||||||
△ | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |||||||
△ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | |||||||
△ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | △ | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 | |||||||||||||
△ | 〇 | 〇 |
残る右下の8×8マスを考えるために、右上の8×8マスの一番下の段、左下の8×8マスの一番右の列を書いておきます。
(右上も左下も、左上の8×8マスと同じなので書くのは容易だと思います)
右下の8×8マス(緑字の部分)は、実際に書いてみると一番上の段も一番左の列も全て偶数と分かります。
つまりこの部分は偶数+偶数を繰り返すことになるので、全て偶数です。
よって、答えは37×3(左上・右上・左下)+64(右下)=175
(3)
(1)、(2)と同様に8×8マスを一つの塊とみなして考えます。
(2)の左上、右上、左下の8×8マスをA、右下の8×8マスをBと表記することにすると、(2)の状況は下の図のようになります。
A | A |
A | B |
ここからさらに32×32マスを考えていきます。
一番上の段と一番左の段は常に1(奇数)ということに注目し、8×8マスの一番上の段と一番左の段が何になるかに注目していくと、(2)の16×16マスに隣接する部分は以下のようになります。
(上述のAやBという表記も併せて記載しています)
ここで、一番上の段と左の段の8×8マスはAになると考えられるので、今わかっている部分までを8×8マスの塊ごとに記載すると次のようになります。
A | A | A | A |
A | B | A | ? |
A | A | B | |
A | ? |
上の図の?の部分は上と左にAが位置し、上の図の赤字のマス(B)と同じ条件になっています。
よって、?の部分もBになります。
A | A | A | A |
A | B | A | B |
A | A | B | ? |
A | B | ? |
またBはすべて偶数のため、上と左がBの部分(上の図の?の部分)は必ず偶数+偶数の形になりBとなります。
さらに、上の図の空白部分(右下のマス)も?と同じ状況になるので、Bと分かります。
よって、A(偶数37個)は9か所、B(偶数64個)は7か所と分かるので、答えは
37×9+64×7=781
問題集の紹介
今回の問題の分類は規則性・数の性質としています。
ただし、問題の分野を分類しづらい問題です。
規則を発見できるかどうかがカギになると思います。
ただ、今回の問題は問題の誘導に素直に従って素直に(1)から書いていけば、実はそれほど難しくありません。
色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツなので、今後灘などの難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
規則性や数の性質を解くうえで、おすすめの問題集を挙げてみます。
以前の再掲ですが、参考にしていただければ幸いです。
(近日中に問題集に関する記事をリライトし、分野別の問題集紹介記事なども作成しようと考えています)
4~5年生向け
4年生くらいで規則性や数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
合格する算数の授業 数の性質編 [実務教育出版]
中学受験専門塾の授業内容を再現しているという内容は、先生と生徒の会話形式で分かりやすくなっています。
内容自体、基本的な事柄からかなり発展的な内容まで含むので、規則性や数の性質を初めて勉強する子だけでなく、幅広い層におすすめの一冊です。
解説が詳しいので、家で教えようという親にも優しい作りになっています。
中学入試 分野別集中レッスン 算数 規則性 [文英堂]
他の単元でも紹介している「分野別集中レッスン」シリーズですが、規則性の分野でもおすすめです。
例題→詳しい解説→ポイントの説明→問題演習に加えて、4日ごとに復習、最後には入試問題演習という形式になっています。
2週間で無理なく終了する分量で達成感を感じやすいのに加えて、その分量なのに入試に必要な規則性のコツが無理なく学べるのがとても良いと思います。
中学入試 速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
例題・手書きノートの様なポイントチェック→問題演習という構成になっており、ポイントチェックの部分は切り離すこともできるためノートの様に参考にしながら問題を解くことができるようになっています。
標準的な難易度の中学受験に求められるポイントを短時間で復習するのに特に適しており、塾の勉強の補強や一通り規則性や場合の数を勉強した後の復習に最適です。
家庭学習において一回目の学習から使用することもできるとは思いますが、子供が1回目から自分で読んで全て理解するのはやや難しいと思われるので、親と一緒に解くなどのサポートが必要かも知れません。
(中学受験を経験していない親でも、読めば理解できる内容だと思います)
5~6年生向け
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されており、規則性や数の性質の復習にも良いです。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
難関校受験6年生向け
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
規則性や数の性質に関する問題も取り上げられており、難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。