灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
(最新の2023年過去問は以下の過去記事を参照ください)
今回は2021年2日目の4番、場合の数に関する問題です。
標準的~やや難しい難易度の問題ですが、「上手い考え方が思い浮かばなくても落ち着いて考えられるか」がポイントだと思います。
(おそらく塾などでは非常にうまい考え方を説明されるのではないかと思うのですが、当ブログでは現実的に考え付きそうな解き方で解いていきます)
灘中入試算数2日目は60分で大問5問程度を解く形式で、2-3問完答、残りは部分点を目指したいところです。
灘中受験生は、この問題はできれば完答したいですが、最低でも(1)、(2)、(4)は正解したいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、場合の数の問題の中では比較的面白い問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 2日目大問4 難易度★★★★☆
(1)
最初の「123」から「312」、「231」までに行った操作は下の図の通りAとBと考えられます。
(この図で書きこんでいる操作は、図の上の数字から下の数字に並べ替える時に行ったものとします)
また、分からない数字(空欄の部分)をそれぞれX、Y、Zと書くことにします。
(表記上の問題なので、実際に問題を解く際にはそのように書く必要はありません)
1、2、3の3つの数字を並べてできる数字は、「123」、「132」、「213」、「231」、「312」、「321」の6通りなので、X、Y、Zは「132」、「213」、「321」のいずれかになります。
「123」から行うことができる操作は残りCとDのみです。
操作Cを行うと、「213」に。
操作Dを行うと、「132」になるため、XとYはそれらのどちらかです。
つまり、Zは残る「321」に決まります。
また、次に「312」(図の右上)に注目します。(*)
「312」から並べ替えられる数字は、以下の通りです。
操作A:123
操作B:231
操作C:132
操作D:321
図で、「312」と繋がっている部分は、「123」、「231」、X、Zです。
ここでZは「321」だったので、Xは残る「132」と分かります。
よって、Yは残る「213」になります。
答え X:132、Y:213、Z:321
(*)の考え方
各数字は操作の数である4通りしか並べ替えることができません。
それを利用して、「123」から並べ替えられない数字「321」をZと特定しました。
(ここまでは比較的素直な考え方だと思います)
同様の考え方を繰り返せば、他の数字も求められます。
ここでは「312」からYに並べ替えられないことから考えましたが、「231」からXに並べ替えられないことを利用しても同様に解くことができます。
(2)
上の図の空欄部分を埋めたものは次のようになります。
(この図で書きこんでいる操作は上の数字から下の数字に並べ替える時のものを書いています。(横向きの操作は左右どちらでも同じ操作です)反対向きの操作はAとBはそれぞれ入れ替えて、CとDは反対向きでも同様の操作を行うことで並べ替えられます)
この問題は、図を見ながら考えると非常に容易に考えることができます。
「123」→「312」→「132」→「123」
「123」→「132」→「312」→「123」
「123」→「312」→「231」→「123」
「123」→「231」→「312」→「123」
「123」→「132」→「213」→「123」
「123」→「213」→「231」→「123」
「123」→「231」→「213」→「123」
の8通りが答えになります。
(別解)
1、2、3回目の操作がそれぞれ何通りあるかを考えてみます。
[1回目の操作]
「123」から入れ替えてできる数字はA~Dの4通り。
[2回目の操作]
入れ替えてできる数字のそれぞれに1回目の操作と同様に4通りの操作が考えられる。
ただし、「123」に戻る、「321」になる操作はダメ。
なぜなら、問題文に3回目の操作で初めて「123」になるとあるので、2回目で「123」は問題文の条件を満たさない。
(単純に2回目で「123」になると3回目で「123」になる方法が無いというのもあります)
また、2回目で「321」になると、3回目で「123」に戻ることもできません。
よって、2回目の操作は(1回目の操作が何であっても)2通り。
[3回目の操作]
2回目の操作で「321」になる組み合わせを除いているので、3回目の操作ではどの組み合わせでも「123」に戻ることができます。
つまりどの組み合わせでも1通り。
以上から、これらの組み合わせは
4×2×1=8通り。
(3)
(2)の別解と同様に考えると、1回目の操作はA~Dの4通り。
2回目の操作は(2)の別解と同様に「123」に戻る以外の3通り。
3回目の操作を考える際に、2回目の操作後に「321」に居る場合とそれ以外で選択肢の数が異なることに注意が必要です。
「321」は、「123」に戻る操作がないため4通り、それ以外では「123」に戻る操作以外の3通りと考えられます。
次に4回目の操作は、次の(5回目の)操作で「123」に戻ることが決まっているので、「321」に進むことはできません。
(次の操作で「123」に戻ることができないため)
ここでも、3回目の操作後に「321」に居る場合とそれ以外で選択肢の数が異なることに注意しなければいけません。
「321」は4通り、それ以外では「123」に戻る操作と「321」に進む操作以外の2通りと考えられます。
これを樹形図に表すと以下のようになります。
上の樹形図を見ると、複雑なようで3つの経路しかないことに気づくと思います。
3つの経路とは、
- 2回目の操作で「321」になるもの
- 2回目の操作で「321」以外、3回目の操作で「321」になるもの
- 2回目・3回目の操作とも「321」以外になるもの
の3つです。
それぞれの並べ替え方は次の通りです。
(2回目の操作で「321」になるもの)
4×1×4×2×1=32 通り
(2回目の操作で「321」以外、3回目の操作で「321」になるもの)
4×2×1×4×1=32 通り
(2回目・3回目の操作とも「321」以外になるもの)
4×2×2×2×1=32 通り
つまり、答えは合計の96通りとなります。
(4)
(2)の図を再掲します。
(2)の解答でも書いた通り、AとBの操作はそれぞれ逆向きの操作がBとAであることに注目します。
この問題ではAまたはBの操作のみで「123」に戻るため、図の赤矢印が付いたAとBの操作だけを使う組み合わせを考えます。
その組み合わせは
「123」→「312」→「231」→「312」→「231」→「123」
「123」→「231」→「312」→「231」→「312」→「123」
の2通りです。
(5)
AとBの操作は次の図の赤矢印が付いた6か所です。
ここで、AとBの操作を偶数回(0回、2回、4回)行って「123」に戻る方法はありません。
よって、答えは96((3)の答え)-2((4)の答え)=94 通り
(考え方)
(4)でAとBの操作を5回行った場合を考えました。
そのうえで、聞かれているものが1回または3回と複数の場合の数なので、1回の場合と3回の場合を正直に考えるのではなく、「全体からそれ以外の場合を引く」という考え方なのではないか」と考えてみて欲しいところです。
この問題では偶数回の操作で問題文の条件を満たすことができないので、簡単に考えることができると思います。
場合の数の問題 問題集の紹介
以前に紹介した場合の数のおすすめ問題集を再掲します。
算数の参考書・問題集を分野別に紹介する記事も作成予定です。
場合の数を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
基本~標準
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 図形・場合の数編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「数・割合と比・速さ編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
分野別集中レッスン算数 場合の数 [文英堂]
場合の数の基本は樹形図など、漏れなく全ての場合を書きだすテクニックだと思います。
そういった、本当に大事だけど学びにくい基本を押さえているのがこの分野別集中テクニック 場合の数です。
短期間で終わるようになっているので場合の数を学び始める4年生にも、苦手を復習したい5年生にもおすすめです。
我が家の次男は場合の数が苦手だったので、6年生になってやっていました。
速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
自分で完成させるノートのような問題集で、どちらかというと参考書に近いかもしれません。
分野別集中レッスンよりやや難しい問題が多い印象です。
解説が分かりやすいため、自宅学習向きです。
塾に通っている人でも、場合の数に苦手意識があれば良いと思います。
難関校対策
割合の問題に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。
中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]
この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。
5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。
6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。
程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。