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親子で挑んだ中学受験体験記と小中高生の勉強解説

灘中の算数 2021年1日目大問7 (数の性質)

 灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。

 

(最新の2023年過去問は以下の過去記事を参照ください)

kishi-john.hatenablog.com

kishi-john.hatenablog.com

 

 今回は2021年1日目の7番、数の性質に関する問題です。

 入試レベルとして標準的~やや難しい難易度の問題ですが、条件を整理することで答えになり得る数字を絞り込めるかがポイントです。

(この問題も前回に引き続き嵌まると難しいです。難易度標準としていますが、もう少し難しく感じる人もいるかもしれません)

 

 灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。

 灘中受験生は、この問題のように標準的な問題はミスなく短時間で解きたいところです。

 

 灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。

この記事で分かること 灘中の算数   2021年  1日目大問7の解説
標準的~やや難しい入試レベルの数の性質の問題の解き方
一見すると条件が分かりにくい問題文から、条件を整理して解く解き方

 

2021年  1日目大問7  難易度★★★☆☆

 

灘中学2021年算数1日目中学入試問題より引用

 方程式を習った方は方程式で解きたくなる問題だと思いますが、方程式ではなかなかうまく解けません。

 条件を整理したうえで、効率よく問題文の条件を満たすものを探していく必要があります。

 

解き方

 3桁の整数Xを、〇△□(100の位が〇、10の位が△、1の位が□)と表記します。

(問題文の条件は、700×〇+70×△+7×□=ABCD となります)

 

 ここで、〇△□の最大値である987に7をかけると、6909になることから、Aは6以下とわかります。

 

 6≧A>B>C>D>0 なので、Dは1~3です。

(Dの最小は1、最大はA、B、Cがいずれも最大(6、5、4)の場合で3)

 

 Dが3の場合、ABCDは6543に決まりますが、これは7で割り切れないため不適です。

 つまり、Dは1か2になります。(*)

 

Dが2の場合

 Dが2の場合、A、B、Cは3~6のいずれか(ただしA>B>C)なので、全通り計算してみます。

 6542÷7=934あまり4

 6532÷7=933あまり1

 6432÷7=918あまり6

 5432÷7=776 ←これは〇=△となり不適です。

 よって、Dが2も答えがありません。

 

Dが1の場合

 Dが1の場合、A、B、Cは2~6のいずれか(ただしA>B>C)なので、全通り計算してみます。

 6541÷7=934あまり3

 6531÷7=933 ←これは△=□となり不適です。

 6521÷7=931あまり4

 6431÷7=918あまり5

 6421÷7=917あまり2

 6321÷7=903 ←これは問題の条件を満たします。

 5431÷7=775あまり6

 5421÷7=774あまり3

 5321÷7=760あまり1

 4321÷7=617あまり2

 

 よって、答えは903と分かります。

 この問題では全通り計算しましたが、Xの各桁の数字が等しくなる場合や、割り切れない場合の計算を最後までしないなどの工夫をすれば、それほどの時間はかからないと思います。

 

別解

 Dが1または2と分かった後(上の解法の(*)の部分)から別の解法で考えます。

 

Dが2の場合

 □は6(6×7=42 と1の位が2になるため)

 ここでX(〇△□)が906になる場合を考えると(*2)、906×7=6342

 これはC>Bとなり、問題文の条件条件(A>B>C)を満たしません。

((*2)Xの決め方ですが、□が6であればどんな数字でもOKです。ここではAが6になるように(〇△□)を906にしました)

 

 10の位以上の部分(634)に7の倍数を足したり引いたりして条件(A>B>C)を満たすものがあるか考えます。

 実際7の倍数を足したり引いたりするのは大変なので、ABCとして考えられる数字と634の差が7の倍数になるかを確認します。

 ABCとして考えられる数字は654、653、643、543の4通り。

 634との差はそれぞれ20、19、9、109といずれも7の倍数にはなりません。

 よってDが2の場合は不適です(答えがありません)。

 

Dが1の場合

 □は3(3×7=21 と1の位が1になるため)

 Dが2の場合と同様にX(〇△□)を903とすれば、903×7=6321 となりこれが答え。

(ここでもXは□が3であれば何にしても良いのですが、Aが6になるように〇を9としています)

 

 ……実際の試験ではこれで終了しても良いのですが、たまたま解けた印象なので他の数字を選んだ場合で考えていきます。

 他の数字、例えば803と仮定した場合、803×7=5621

 これは問題文の条件条件(A>B>C)を満たしません。

 10の位以上の部分(562)に7の倍数を足したり引いたりして条件(A>B>C)を満たすものがあるか考えます。

 ABCとして考えられる数字は654、653、652、643、642、632、543、542、532、432の10通り。

 562との差はそれぞれ、92、91、90、81、80、70、19、20、30、130 です。

 太字の91と70は7で割り切れ、6531と6321が答えの候補となります。

 それぞれの場合のXは933と903であり、すべての桁の数字が異なる903が答えです。

 

解説

 今回も2通りの解き方を挙げましたが、別解の解き方もそれほど上手な解き方ではありません。

 1つ目の解き方で(4桁の整数÷7)の計算を繰り返しましたが、別解は適当な数字を当てはめてその数字との差が7の倍数になるか確認するという、本質的には同じ作業をしています。

(考え方がシンプルな分、一つ目の考え方の方が良さそうな気もします)

 

 つまり、奇をてらった解き方よりも、条件を整理して確実に一つ一つ計算することで解ければいいと思います。

 

 良い解き方が思い浮かばない時こそ、基本的な問題をどれだけ解いてきたかが問われます。

 夏までの時期はしっかり良質な基本的な問題演習を積み重ねて、着実に実力アップを図るようにしてください。

(この場合の基本的な問題というのは、入試レベルの基本問題を指します。簡単なだけの問題はたくさんこなしても意味がありません)

 

 この問題の解答は5分以上かかるかもしれません。

 特に、上の解答を見ると非常に時間がかかりそうと感じると思います。

 この問題は、問題文や答案用紙の形式から答えが一つと推測されます(決めつけは危険ですが)。

 一つ答えが出た時点で他の問題に移り、時間が余れば他にも無いかチェックするという考え方でも良さそうです。

 

 ブログの性質上文章で解答を書いているため長々とした答案になっていますが、いかに計算を省くか考えることで問題を解くために必要な時間は減らせます。

 こういった無駄を省く作業も、普段から入試を意識して問題演習する(この場合は短時間で解く)ことで身についてきます。

 漫然と問題を解くのではなく、入試をイメージしながら問題演習するようにしましょう。

 

問題集の紹介

 数の性質の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。

 当ブログは灘中の算数を取り上げていますが、灘中では毎年のように出題されますし、他の難関校でも出題されることが多い分野です。

 

 この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。

 

 この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。

 今後難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。

 

 数を性質を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。

(何度か紹介しているの内容の再掲になります)

 参考にしていただければ幸いです。

 

基本~標準

 4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。

 目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。

 

合格する算数の授業 数の性質編 [実務教育出版]

 中学受験専門塾の授業内容を再現しているという内容は、先生と生徒の会話形式で分かりやすくなっています。

 内容自体、基本的な事柄からかなり発展的な内容まで含むので、規則性や数の性質を初めて勉強する子だけでなく、幅広い層におすすめの一冊です。

 解説が詳しいので、家で教えようという親にも優しい作りになっています。

 

きょうこ先生のはじめまして受験算数 数・割合と比・速さ編 [朝日学生新聞社

 朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。

 別冊の「図形・場合の数編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。

 この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。

 また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。 

 

難関校対策

 数の性質に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。

 

中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]

 この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。

 5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。

 6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。

 

 程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。

 

算数プラスワン問題集 [東京出版]

 難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。

 また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。

 様々な領域の問題が収載されています。

 入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。

算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]

 難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。

 それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。

 難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。