灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2021年1日目の5番、数の性質に関する問題です。
入試レベルとして標準的な(~やや難しい)難易度の問題ですが、上手い解き方が思い浮かばないときにどのように対処するかがポイントだと思います。
また、手際よく規則性を見つけることも重要なポイントです。
灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。
灘中受験生は、この問題のように標準的な問題はミスなく短時間で解きたいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 1日目大問5 難易度★★★☆☆
解き方1
この問題を見て、いきなり解き始めるのは(似た問題をやったことが無ければ)難しいと感じるかもしれません。
このように何をして良いのか分からない場合、
- とりあえず書き出してみる
- 法則が無いか考える
というのがポイントです。
この問題の場合、2桁の平方数なので10×10から考えていきます。
10×10=100、100÷15=6あまり10
11×11=121、121÷15=8あまり1
12×12=144、144÷15=9あまり9
13×13=169、169÷15=11あまり4
14×14=196、196÷15=13あまり1
15×15=225、225÷15=15あまり0
16×16=256、256÷15=17あまり1
……
ここで注目するのは、平方数の増え方です。
10の2乗から11の2乗で21増加します。
11から12では23、12から13では25……。
これを順に並べると以下のようになります。
21、23、25、27、29、31、33、35……
そうです、これは2ずつ増える等差数列です。
(この数列を数列Bとします)
先ほどの10×10を15で割った余りである10に、この数列Bを足していきます。
10、31、54、79、106、135、166、199、234……
(10から始まり、差がBの数列になっているとも言えます)
これもこのままでは考えにくいので、15で割った余りを書いていきます。
10、1、9、4、1、0、1、4、9、1、10、6、4、4、6、10……
これは、15個の数字が1セットになります。
(15個で1セットと気づかなければ、かなりの数を計算することになるかもしれません……)
その1セットごとに4個の1が含まれます。
10から99まで6セットちょうど作ることができるので、答えは24です。
実際にこの問題を解く場合、上の解き方のように全て書くと時間がかかるため法則に気づけば省略しながら書いていくことになると思います。
(どんな法則か予測しながら解くことが重要です)
この際、何個の数字で1セットになるかを間違えやすいので注意が必要です。
(2個目の10が出てきたところで1セット(周期)と早とちりしないよう注意)
ブログという性質上文字で説明せざるを得ないのですが、この問題は文字で読んでも少し分かりにくいかもしれません。
解き方2
以前に当ブログで2を〇回かけたものを17で割った余りを求める問題の解説をしました。
(詳しくは以下の過去記事をご覧ください)
また、いずれこのブログでも取り上げますが、灘の数の性質の問題で377の6乗の約数の中で15で割った余りが1になるものを考える問題もあります。
(2019年1日目大問4)
この問題では、377の約数である13と29をそれぞれ15で割ると2不足、1不足になることに注目します。
これらの問題を解いたことがあれば、Aを15で割った余りに注目して解く方法に気づくかもしれません。
上に挙げた問題を知らなくても大丈夫。
一緒に考えていきましょう。
Aは2桁の数字なのですが、規則性を見つけるためにA=1の場合から順にA、Aを15で割った余り、A×A、A×Aを15で割った余りについて考えていきます。
それらを表にまとめると次のようになります。
A | Aを15で割った余り | A×A | A×Aを15で割った余り |
1 | 1 | 1 | 1 |
2 | 2 | 4 | 4 |
3 | 3 | 9 | 9 |
4 | 4 | 16 | 1 |
5 | 5 | 25 | 10 |
6 | 6 | 36 | 6 |
7 | 7 | 49 | 4 |
8 | 8 | 64 | 4 |
9 | 9 | 81 | 6 |
10 | 10 | 100 | 10 |
11 | 11 | 121 | 1 |
12 | 12 | 144 | 9 |
13 | 13 | 169 | 4 |
14 | 14 | 196 | 1 |
15 | 15 | 225 | 0 |
16 | 1 | 256 | 1 |
……
ここで、上の表ではA=16まで書きましたが、Aを15で割った余りが等しければA×Aを15で割った余りも等しくなります。
(この場合A=1の場合と16の場合)
ここからは中学生以上の内容になりますが(小学生は読み飛ばし推奨)、Aが15で割ると余り1になる数であれば、A=15n+1と書くことができます。
するとA×A=(15n+1)×(15n+1)=225n2+30n+1 となり、15で割ると1余ることになります。
つまり、Aを15で割った余りによってA×Aを15で割った余りも決まるということです。
ここから、Aが1から15までを1セットとして、A×Aを15で割った余りは繰り返すということが分かります。
1セット内にA×Aを15で割った余りが1になるものは4個(上の表の赤字部分)。
10から99までの間に6セット作ることができ、1セット内にA×Aを15で割った余りが1になるものは4個あるので、答えは24個になります。
二つの解き方を書きましたが、解き方1でも2でもあまり難易度・時間とも変わらないと思います。
ただし、解き方2の方が15個の数字で1セットと気づきやすいかもしれません。
問題集の紹介
数の性質の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
当ブログは灘中の算数を取り上げていますが、灘中では毎年のように出題されますし、他の難関校でも出題されることが多い分野です。
この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。
この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。
今後難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
数を性質を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
基本~標準
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
合格する算数の授業 数の性質編 [実務教育出版]
中学受験専門塾の授業内容を再現しているという内容は、先生と生徒の会話形式で分かりやすくなっています。
内容自体、基本的な事柄からかなり発展的な内容まで含むので、規則性や数の性質を初めて勉強する子だけでなく、幅広い層におすすめの一冊です。
解説が詳しいので、家で教えようという親にも優しい作りになっています。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 数・割合と比・速さ編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「図形・場合の数編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
分野別集中レッスン算数 規則性 [文英堂]
この問題でも解き方1で多少考え方を使った規則性について、基礎からまとめている問題集です。
場合の数の問題の時にもこのシリーズを紹介したのですが、基本から標準的な入試レベルまで短期間で履修(復習)することができます。
短期間で終わるようになっているので学び始めの4年生にも、苦手を復習したい5年生にもおすすめです。
速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
自分で完成させるノートのような問題集で、どちらかというと参考書に近いかもしれません。
分野別集中レッスンよりやや難しい問題が多い印象です。
解説が分かりやすいため、自宅学習向きです。
塾に通っている人でも、規則性の問題に苦手意識があればやっても良いかなと思います。
難関校対策
数の性質に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。
中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]
この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。
5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。
6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。
程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。