中学や高校に通学する上で、通学時間というのは非常に重要です。
特に志望校を決める際には通学時間を考慮する人がほとんどではないでしょうか。
当ブログでも志望校の決め方というテーマで通学時間に関して取り上げています。
(詳しくは過去記事をご覧ください)
実際、我が家の中学受験でも無理なく通学できることというのは学校を決めるにあたり重視した部分でした。
では、どの程度の通学時間が良いのでしょうか。
今回の記事では、志望校を決めるうえでも重要な通学時間に関してまとめてみました。
中高生の通学時間について
かつて、電車で30分以上かけて通学している人の成績が良い傾向があると話されていた先生が居ました。
通学時間に勉強することが、成績向上につながるという考えだったと思います。
実際、私の母校ではそれくらいの通学時間の人が成績トップ層に多かった気がします。
一方、遠方からの通学は成績面では不利だという考え方や、通学時間が短ければ短いほど成績には有利だという考え方もあるようです。
実際、どの程度の通学時間が良いのでしょうか?
通学時間に関する調査報告
総務省統計局の「平成28年度社会生活基本調査」によると、高校生の通学時間(往復)の全国平均は48分とのことです。
思ったよりも少ないと感じたのですが、公立と私立の差や、地域差もあるのかもしれません。
ベネッセは難関校・上位校の私立中高一貫校受験生、在籍性の保護者や学校に通学時間の実態を調査するためのアンケートを行い、以下の結果となったそうです。
- 志望校の通学時間を平均すると52分
- 在籍者の平均通学時間は約60分(学校へのアンケート)
このことから、実際に入学した学校の通学時間は、志望校の平均通学時間よりも多少長くなることがわかりました。
また、先ほどの総務省の統計よりも通学時間が長く、難関校・上位校の私立中高一貫校に通う生徒は通学時間が長い傾向があると考えられます。
ただ、この調査では通学時間はどれくらいが良いのかが分かりません。
そこで、通学時間が心身に与える影響や、成績との関係を調査した文部科学省の調査報告を二つ見つけたので紹介します。
通学制限に係わる児童生徒の心身の負担に関する調査研究
東京学芸大学の朝倉隆司教授(芸術・スポーツ科学系・養護教育講座)らは小学5年生と中学2年生を対象に通学と心身の負担に関する調査を行い、「通学制限に係わる児童生徒の心身の負担に関する調査研究」(文部科学省新教育システム開発プログラム事業)という報告をされています。
(この調査では遠距離の通学手段が主にバスであったため、遠距離からの通学=バス通学として書かれています)
内容は以下の通りです。
小学校 5 年生の通学と心身の負担に関する調査
- 徒歩の場合,4 キロメートルを過ぎると少しストレスがかかってくる可能性がある.
- バスの場合,長時間通学でのストレスは確認されていないが,脳が活性化していないことも懸念される.
中学校 2 年生の通学と心身の負担に関する調査
- 徒歩の場合,距離が長くなるにつれストレスが増大してくる可能性がある.
- バスの場合は小学校と同様の傾向である.
- バス通学については,部活動や放課後の教育活動が行いにくくなるなどの課題がある.
つまり、まとめると……
- 小中学生ともに通学時間が長くなるとストレスが増える。
- バス通学は通学時に脳が活性化していない可能性があり、課外活動も制限される恐れがある。
ということのようです。
当たり前とも思える結果なのですが、このように調査されていることを有難いと思います。
また、この結果をさらに発展させるように、次のような調査が行われています。
小中学生の生活,健康・体力,学習に通学手段・時間が及ぼす影響
さらに、伊藤秀樹講師(東京学芸大学)、北澤武准教授(東京学芸大学)らは「小中学生の生活,健康・体力,学習に通学手段・時間が及ぼす影響-発達段階別比較-」 (平成31年度「少子化・人口減少社会に対応した活力ある学校教育推進事業」)において次のように報告しています。
(この報告でも、先ほどの報告と同様に遠距離からの通学=バス通学としています)
中学校 1・2 年生において
- バス群の生徒は非バス群の生徒に比べて,塾に通っている割合が有意に低かった.
- バス群の生徒は非バス群の生徒に比べて,塾に通う日数の平均値も有意に低かった.
塾に通えるかどうかは,学校外での勉強時間や教科・活動の得意・不得意,成績などの差につながり,それらの差はさらに学習に向かう態度の差につながってくることも予想される.
一方、バス通学の児童の方が学校を「楽しいもの」「通いたいもの」として感じている様子もみられた.
これらの結果からは,学校はバス通学を余儀なくされる児童・生徒にとって,学習に向かう態度が育まれたり,友だちや多様な人々とつながれたりという意義をもった場であることが示唆された.
この調査では、バス通学(つまり遠方からの通学)の生徒は塾に通う時間が少なくなり、成績に影響する可能性があるとしています。
ただ、同調査内でバス通学の生徒の成績が悪いわけではないとも報告しています。
この報告は地方の小中学校を対象としたものであり、都心部の私立中高で同じ結果になるとは限りません。
ただ、遠方から通学している生徒は塾や課外活動に充てる時間が少なくなるというのは間違いなさそうです。
一方、遠方から通学している児童の方が学校を楽しいと感じるというのは興味深い結果でした。
私立中高に置き換えると、遠方から通学する生徒の学校に対する満足度が高いという可能性があるのかもしれません。
難関校・上位校の私立中高一貫校在籍者の保護者アンケート(ベネッセ)
先ほども紹介したベネッセの調査では、難関校・上位校の私立中高一貫校在籍者の保護者にアンケートを行い、在籍校の通学時間と在籍校が「我が子に合った学校」だったかどうかとの相関関係を報告しています。
その結果は以下の通りです。
- 通学時間が45分以上60分未満のグループでは、「我が子に合った学校」だと思う保護者の割合も85%と満足度が高い。
- 通学時間は短くなればなるほど良いように思えるが、現実は「我が子に合った学校」とする保護者の割合が減少する傾向があった。
- 通学時間が60分以上90分未満のグループも満足度が高い。
- 通学時間が90分以上と回答した保護者はあまりいなかったが、ほとんどが「我が子に合った学校」という回答であった。
このことから、通学時間が45-90分程度の学校を選ぶことで、「我が子に合った学校」が見つかる可能性が高いのではないかとまとめられています。
我が家の場合
我が家の次男が入学した学校も、通学時間は1時間弱程度でした。
まだ入学後間もない時期なので、本当に入学して良かったと言えるかはまだ分かりませんが、少なくとも次男は楽しそうに通学しています。
本人が本当に志望して入学できた学校なので、勉強も頑張る気になっているようです。
通学時間を有効利用して勉強や読書してくれたらと期待していますが、それは今のところできていないようですが……。
小学校時代に比べるとかなり早起きする必要がありますが、今のところ体力的にも問題ないようです。
学校の最寄り駅まで座っていられるのもポイントなのかもしれません。
志望校を考える際には、子供の体力や通学時に座れる電車なのかということも考慮してみる価値がありそうです。
まとめ
私立中高の通学時間は、全国平均と比較して長い傾向があります。
通学時間が長くなることで、塾や課外活動にかける時間が少なくなると考えられます。
一方で、遠距離からの通学でも必ずしも成績が悪いとは限らないようです。
実際、45分以上かけて通学している生徒や保護者の満足度が高い傾向があり、その生徒の成績が悪いわけではないと考えられます。
これは、その生徒が通学時間も有効利用しているということなのでしょうか。
また、45分以上かけて通学している生徒や保護者の満足度が高い理由として、本当に希望した学校に通学していることが考えられます。
ある程度遠くても通いたい学校ということなんでしょうね。
また、通学時間だけでなく、子供の体力や学校まで座っていられる電車かどうかということも考慮しても良さそうです。
通学時間だけで志望校を決められるわけではないと思いますが、これらの結果が志望校を決める参考になれば幸いです。