灘中の算数入試問題を不定期に解説しています。
今回は2021年1日目の6番、数の性質に関する問題です。
入試レベルとして標準的な難易度の問題ですが、中学受験に多い一見すると何をしたら良いのかよく分からない問題への対処がポイントです。
(この問題は簡単に解ける人も居ますが嵌まると難しいです。難易度標準としていますが、もう少し難しく感じる人もいるかもしれません)
灘中入試算数1日目は60分で12、3問を解く必要があり時間との勝負です。
灘中受験生は、この問題のように標準的な問題はミスなく短時間で解きたいところです。
灘中受験を考えていない受験生でも、標準的な難易度の問題なので解いてみてはいかがでしょうか。
2021年 1日目大問6 難易度★★★☆☆
この問題のように、計算の法則を決められている問題というのは中学受験でよく出題されます。
一見するとよく分からない法則でも、とりあえず問題の指示に従って考えてみると真に求められている考え方が見えてきます。
B =6なので、[6]=36
また、2×Bは12なので
[2×B]=1×2×3×4×6×12=1728
つまり[2×B]÷[B]=1728÷36=48(①の答え)
ここで注目すべきは、[B]から[2×B]への変化です。
もともと
[B]=1×2×3×6
だったのに対して、
[2×B]=1×2×3×6×4×12
と、4×12が増えています(赤字部分)。
これは、[B]の各項目(かけている数字)を2倍することで説明できます。
[B]の右辺である1×2×3×6の1、2、3、6のそれぞれを2倍すると
1 → 2
2 → 4
3 → 6
6 → 12
のように2、4、6、12となりますが、もともと[B]に含まれなかった4と12が[2×B]では増えたと考えられます。
次は[C]について考えます。
[C]はCの約数を全てかけあわせたものです。
また、[2×C]÷[C]の答えである192を素因数分解すると、2×2×2×2×2×2×3です。
ここから、Cの約数には複数の2と3があると考えられます。
さらに[B]の解き方を参考にすると、Cの約数には2の累乗(2を複数回かけたもの)と3が含まれることが想像できます。
(この時点で、ここから下のほとんどの内容を飛ばして結論の部分まで閃くことができる人も居ると思いますが……ここでは一つ一つ考え方を説明していきます)
[C]は1、2、3、2×2、2×3……、2の累乗×3と考えられ(*)、それぞれを2倍すると以下のようになります。
1 → 2
2 → 4
3 → 6
4 → 8
6 → 12
……
2の累乗×3 → 2の累乗×2×3
ここで、[B]の場合と同様に矢印の左側の数字を2倍する(矢印の右側の数字)と、矢印の左側の他の数字と重複するものがあることに気づきます。
(上の例で同じ色の数字になっているものが重複するものです)
[B]の場合と同様に考えると、[2×C]÷[C]=192 なので、
(矢印の右側を全てかけたもの)÷(矢印の左側を全てかけたもの)=192
よって、(重複しない数字×2)をかけあわせたものが192と考えられます。
つまりC×2と、Cの約数のうちで最も大きい2の累乗×2の積が192になります。
192÷(2×2)=48
48÷3=16なので、4×(4×3)=48 となり、
Cの約数のうちで最も大きい2の累乗は4、Cは12と分かります。
(*) 矢印の左の数字を2倍することで重複しないというのは、Cの約数の中で2を最大限かけた数字×2(2以外の約数もあるため2を最大限かけた数字が複数の場合、それらをかけあわせたもの)が192と分かります。
(つまり、答えが分かってから言うと、この問題の場合2を最大限かけたものは4と12、それぞれに2をかけると8と24になり、その積は192となります)
192を素因数分解すると、2×2×2×2×2×2×3なので、Cの約数には2を複数回かけたものと3が含まれることが分かります。
[B]の考え方を参考にすると、考えやすいと思われます。
[C]に関しては少しイメージしにくいと思うので、[B]を確実に解くこと、[B]の考え方を利用できないか考えることが重要です。
難関校受験生はほとんどが[C]まで解けると思いますが、思い浮かばないときは確実に[B]だけでも得点するようにしましょう。
問題集の紹介
数の性質の問題は中学受験で非常に重要なテーマの一つです。
当ブログは灘中の算数を取り上げていますが、灘中では毎年のように出題されますし、他の難関校でも出題されることが多い分野です。
この問題に詰まってしまった人は、まずは標準的な問題をしっかり解けるように対策しましょう。
この問題はできたという人でも、さらに色々なパターンの問題を解くことが難問を解くコツです。
今後難関校受験を考える方はたくさんのパターンの問題を解いてみてください。
数を性質を含めた算数のおすすめの問題集を挙げてみます。
参考にしていただければ幸いです。
基本~標準
4年生くらいで数の性質を学び始める頃、または苦手を復習目的の5年生くらいを想定しています。
目指す学校の難易度により学年は前後すると思います。
合格する算数の授業 数の性質編 [実務教育出版]
中学受験専門塾の授業内容を再現しているという内容は、先生と生徒の会話形式で分かりやすくなっています。
内容自体、基本的な事柄からかなり発展的な内容まで含むので、規則性や数の性質を初めて勉強する子だけでなく、幅広い層におすすめの一冊です。
解説が詳しいので、家で教えようという親にも優しい作りになっています。
きょうこ先生のはじめまして受験算数 数・割合と比・速さ編 [朝日学生新聞社]
朝日小学生新聞で連載され、好評だったシリーズの書籍化です。
別冊の「図形・場合の数編」も以前の記事で紹介したのですが、勉強を始める初期の人や、苦手範囲を理解したいという人に分かりやすく解説しているため非常におすすめです。
この本を使用することで入試基礎レベルまでは理解することができると思います。
また、著者のYouTube動画も非常に分かりやすいため、併せて視聴するとより理解が深まると思います。
分野別集中レッスン算数 規則性 [文英堂]
この問題でも解き方1で多少考え方を使った規則性について、基礎からまとめている問題集です。
場合の数の問題の時にもこのシリーズを紹介したのですが、基本から標準的な入試レベルまで短期間で履修(復習)することができます。
短期間で終わるようになっているので学び始めの4年生にも、苦手を復習したい5年生にもおすすめです。
速ワザ算数 規則性・場合の数 [文英堂]
自分で完成させるノートのような問題集で、どちらかというと参考書に近いかもしれません。
分野別集中レッスンよりやや難しい問題が多い印象です。
解説が分かりやすいため、自宅学習向きです。
塾に通っている人でも、規則性の問題に苦手意識があればやっても良いかなと思います。
難関校対策
数の性質に特化した問題集、というより他の記事でも繰り返し紹介している難関校受験生におすすめの問題集を再掲します。
中学受験を成功させる熊野孝哉の「場合の数」入試で差がつく51題 +17題 [エール出版社]
この本は難関校を目指す生徒のうち、次のような場合におすすめです。
5年生で一通りの学習が終わり、場合の数の分野の発展問題に取り掛かろうと考えている。
6年生になって入試問題に取り組む前後で、場合の数に苦手意識を持っており復習したい。
程よく難しく、解説も分かりやすいため、自宅学習や塾の勉強に追加するのにおすすめです。
算数プラスワン問題集 [東京出版]
難関校を目指す子どもが、5年生後半頃、一通りの勉強が終わりさらに発展的な内容に取り掛かる前におすすめなのがこの算数プラスワン問題集です。
また、中堅校志望の6年生が一通りの復習をする目的で使用するのもおすすめ。
様々な領域の問題が収載されています。
入試に必要な「何を使って解くのかの見極め」をする力を養成することを目標としており、自宅学習メインの子は当然として塾に通われている子にもおすすめです。
算数 合格へのチャレンジ演習 [東京出版]
難関校受験生におすすめしたいものの一つに、月刊誌「中学への算数」があります。
それ自体の定期購読もおすすめなのですが、この合格へのチャレンジ演習は「中学への算数」の中でも難しい「発展演習」で取り上げられた問題が厳選されています。
難関校受験生にはチャレンジしてほしい問題集です。