我が家の次男は家庭学習(パパ塾)で中学受験に挑み、2023年第一志望に無事合格しました。
主に中学受験に関する内容をお伝えしている当ブログですが、今回は中学受験どころか高校受験、大学受験のみならず社会人でも重要な「暗記」について解説します。
記憶のメカニズムとおすすめ暗記法
おすすめの暗記法を紹介する前に、記憶のメカニズムを解説することでどういった暗記であれば効率が良いのか考えていきます。
記憶のメカニズム
短期記憶と長期記憶
記憶とは、情報を脳に一時的に保管する「短期記憶」と長期間定着させる「長期記憶」に分類されます。
短期記憶とは、新しく得られた情報を脳の中で一時的に保存することです。
これに対して、短期記憶で保存された情報を脳の奥にある海馬という場所で変換し、大脳皮質という領域で長期間保存することを長期記憶と言います。
短期記憶は名前の通り短期間しか保持できません。
また、短期記憶で保持できる記憶の量はそれほど多くないと言われています。
よって、試験に必要な記憶とは長期記憶なのです。
海馬の役割
前述の通り、長期記憶するためには海馬で情報を変換し大脳皮質に蓄積される必要があります。
では、海馬はどのような場合に情報を長期記憶に変換するのでしょうか?
結論から言うと、海馬は重要度が高いと思われる情報を長期記憶として変換します。
その重要度が高い情報は、以下のようなものです。
- 好きな項目(好きな教科の知識や、趣味の内容など)
- 強い恐怖やショックを伴う記憶
- 何度も繰り返しインプットされる知識……など
例えば苦手な教科は頑張っても覚えられないのに、好きな教科はそれほど苦労せずに覚えられるという経験はありませんか?
好きな曲の歌詞はすぐに覚えられるという人も居るかも知れません。
これは、「快感」を伴う好きな項目の記憶は海馬に重要と判断されやすいためです。
また、逆に強い恐怖やショックを伴う記憶は、海馬が生存に関係する重要な情報であると判断しやすいようです。
それらのように強い感情を伴うものでなくても、繰り返しインプットされる知識も海馬が重要と判断します。
なお、この海馬における長期記憶への転換は睡眠中に行われることが知られており、夢を多く見るレム睡眠中の脳細胞の新生が関係しているようです。
忘却曲線
上述のように短期記憶として得られた知識の一部は、長期記憶に変換され蓄積されます。
では、長期記憶に変換されなかった記憶はどうなるのでしょうか?
答えは忘れられてしまうのです(当たり前ですね……)。
「時間の経過」と「記憶の定着率」をグラフで表したものを忘却曲線と言います。
19世紀ドイツの心理学者であるヘルマン・エビングハウスは、無意味な音節を被験者に記憶させ、時間と共にどのくらい忘れたかを検証しました(エビングハウスの忘却曲線)。
結果は以下のとおりです。
- 20分後には42%を忘れ、58%を覚えている。
- 1時間後には56%を忘れ、44%を覚えている。
- 1日後には74%を忘れ、26%を覚えている。
- 1週間後(7日後)には77%を忘れ、23%を覚えている。
- 1ヶ月後(30日後)には79%を忘れ、21%を覚えている。
覚えた物事でも、1日(24時間)経過するとなんと74%も忘れているのです。
記憶のメカニズムから考えられる暗記の重要な要素
ここまで述べたように、試験で役立つのは長期記憶です。
短期記憶から長期記憶に至る経路を図にすると、以下のようになります。
短期記憶から長期記憶に至るうえで重要なものは上の図で赤字で書かれた部分です。
繰り返し
短期記憶した知識のうち、1日で実に74%もの割合が忘れられてしまいます。
このため、忘れてしまった記憶は再度覚える必要があります。
また、一度忘れてしまった物事を覚えなおした記憶の方がより長期記憶に残りやすいとも言われます。
このため、暗記の際には1回だけではほとんどの知識を忘れてしまうという前提で、何回も繰り返し記憶する暗記する必要があります。
具体的な例としては、暗記の翌日、3日後、1週間後、1か月後と1か月以内に4回程度繰り返すことで、記憶が定着しやすいと考えられます。
(過去記事でも成績を伸ばすために復習が重要であるとの記事を書いています。良ければ参照ください)
睡眠
短期記憶の長期記憶への定着は、睡眠中に行われます。
つまり、しっかりとした睡眠を取らなければ記憶が定着しません。
(暗記したければ、絶対に睡眠不足は避けなければいけません)
また以前に当ブログでも取り上げましたが、睡眠不足になると海馬が小さくなる、注意力や学習能力が低下する、精神的に不安定になるなど多くの悪影響が見られます。
(詳しくは過去記事をご覧ください)
強い感情
先述のように、「快楽」を伴う好きな項目や強い恐怖などは海馬が重要と判断しやすいようです。
勉強中に生存の危機を感じるほどの強い恐怖を感じる……などという状況はあまり考えられないので(勉強どころではないですよね)、好き・楽しいというポジティブな感情を感じられるように工夫するのが良さそうです。
実際、感情を司ると言われる扁桃体の影響で、好き・楽しいと感じると海馬の働きが活性化され記憶はより定着しやすくなります。
歴史の知識であれば、教科書のような知識の羅列よりもストーリーを知れる歴史漫画などの方が印象に残りやすいと思います。
そのように楽しいと感じられる工夫を考えるのは重要です。
いつ終わるのか分からない勉強は脳がストレスを感じやすいので、薄い問題集を使うことで脳のストレスを減らす工夫をするのもおすすめです。
暗記法8選
実際に色々な暗記法を紹介していこうと思います。
ただ、どの暗記法を使うにしても重要なのは上で紹介した通り繰り返す、しっかり眠る、楽しむ(ストレスを避ける)ことです。
特に、繰り返しと睡眠という面から、寝る前の30分に暗記して、次の日に起きてから復習をするのが効率が良いようです。
短期記憶の項目で述べましたが、短期記憶ではそれほど多くのことを覚えられません。
地道に少しづつ(30分程度)暗記していくのがおすすめです。
書く
昔ながらの方法ではありますが、書くことは暗記するうえで有効です。
単に見るだけよりも、書くことによって様々な神経が刺激されます。
ただし、書くことそのものが目的になる(単に書く作業になっている)ことが無いよう、覚えるという意識をちゃんと持つことが重要です。
音読する
見る(黙読する)だけであれば視覚しか使いませんが、音読することで聴覚の情報も得られます。
また発声することが脳を刺激するため、より効率よく暗記することができます。
色ペンを使用する
色ペンを使うことで、白黒のテキストよりも見やすくなり記憶に残りやすくなることが期待できます。
情報の内容によって色分けすると、色と関連付けて暗記することもできます。
ただし、色ペンでアンダーラインを引く作業は勉強している気になっただけということが多く、また色を使いすぎると何が重要か分からなくなるため注意が必要です。
暗記ペン+暗記シートを使用する
色ペンと同様に、色と関連付けて覚えられる効果が期待できます。
また、必要な項目をすぐに隠せるため復習が容易であり、何回も繰り返し覚えるという作業に向いています。
暗記アプリを使用する
現在は学習のために様々なアプリがリリースされています。
そういったアプリを使用することで、ノートを持ち運ぶ必要が無い、ノート作成の時間も必要ない、移動中などの隙間時間に手軽に使用でき繰り返し覚える作業に向いているなどのメリットがあります。
運動しながら覚える
座ったまま覚えようとするより、体を動かすほうが脳が刺激されるため効果的に暗記できます。
歩きながらや軽くスクワットしながら音読することにより、体の動きと連動して覚えることが期待できます。
人に説明する
覚えた内容を人に説明することも有効です。
覚えた内容を人に伝わるように頭の中で整理する必要があるため、正しく理解できているかチェックができ、記憶の反復にもなるため記憶に残りやすくなります。
友達に単に説明する以外に、講義してみる、覚えた内容をクイズとして出し合うなども効果的です。
(某高学歴芸人さんは、一人でも頭の中でエア授業(講義)をすると良いと話されていました)
関連付けて覚える
漢字や語彙問題、英単語などの暗記法として、関連するものを一緒に覚えるというものがあります。
関連するものとは、同義語や対義語などです。
例えば、「河童の川流れ」ということわざを覚えたなら、似た意味の「弘法も筆の誤り」、「猿も木から落ちる」、「千里の馬もけつまづく」、「上手の手から水が漏る」などのことわざも一緒に覚えると良いということです。
(後ろ二つはマニアックなので、中学受験であれば知らなくても良いと思います)
覚えるものが多くなるように感じるかもしれませんが、関連する情報を結び付けて覚える方が記憶に残りやすいようです。
最後に
暗記法に関しては、比較的オーソドックス且つ私が実際にやったことがあるものを取り上げました。
ただ、暗記のコツは方法というより、記憶のメカニズムに関連した「繰り返し」、「睡眠」、「楽しむ」です。
さらに本文では取り上げていませんが、運動や食事も非常に重要です。
当ブログでも過去記事で取り上げているので、良ければご覧ください。